「店に入れば育つ時代」は終わった ―― 採用を仕組みに変え、憧れでつなぐ「ABCの関係」とは
こんにちは。
『組織の左腕』代表の桑田龍征です。
今回は「採用と育成の“仕組み化”」について書いてみます。
欲しい人材ほど、一度返す

採用について、僕はホストクラブを運営するなかで、マニュアルとプログラムをかなり細かく整備してきました。
書類選考から面接まで手順を設計し、誰が担当しても同じ判断にたどり着けるところまで仕組みにしています。採用は勘やセンスの世界だと思われがちですが、経営者としては、ここをいちばん設計すべき領域だと考えています。
一次面接や書類選考そのものは、正直に言えば一般的です。今は求人対応をLINE公式で行っているので、その返信の内容からも人物を見ています。
ただ一つだけ特殊なことをしていて、それが「試し圧迫」です。圧迫といってもハラスメントのようなものではなく、面接の中で軽く負荷をかけてみることで、「その人に覚悟が決まっているかどうか」を見極めるやり方です。
たとえば週に2〜3回しか出勤できない人の場合、店にとっては労働の価値よりも育成コストや管理コストのほうが高くつきます。
そこであえて「一度、帰ってください」と伝えます。欲しい人材ほど、いったん返す。そのうえで、それでも「やりたい」と自分から連絡してくる人こそ、本当にやる気のある人だと判断しています。
興味深いのは、データで見ると、一度落としたあとで採用された人のほうが、その後に急激に伸びる場面が多いことです。「見返したい」「認めさせたい」という気持ちが、強い原動力になるのだと感じます。
これは僕自身の原体験でもあります。初めて歌舞伎町に連れて行かれたとき、大きく華やかな店に通されたにもかかわらず、顔を見た瞬間に断られました。小さな箱に回され、そこから働き始めた。
悔しさは相当なものでしたが、その悔しさを材料にして、やがてグループで一番、歌舞伎町で売上一番まで到達しました。負の感情を燃料に変えられる人は、伸びると考えています。
採用は「フィルター」と「橋渡し」で設計する

コツをすべて明かすと対策されてしまうので核心は伏せますが、採用には何段ものフィルターをかけています。
たとえば、採用チームと店舗の責任者は、最終的にマッチングが決まるまで会わせません。
面接はグループの小さなバーで行い、一次を通過した人にはその場で「おめでとう」と伝えます。そして、その隣で、通過しなかった人にはその場で帰っていただく。残った人にとっては、これが「自分は選ばれた」という実感になります。
段階を踏んだ最後に、店舗で圧倒的に売れているホストと引き合わせます。「この人はこういう人生を歩んできた。だから君にも合うかもしれない」と橋をかけていく。
僕はこれを「ABCの関係」と呼んでいます。
面接者がクライアント、トップホストがアドバイザー、採用担当者がブリッジという役割分担です。
ブリッジをしっかりかけて、その人にとって心から憧れられる存在をつくる。こちらから見れば「本人のためにもなり、店の力にもなってくれそうだ」という接続を、丁寧に設計していきます。繋いで終わりにはせず、そのあと研修が仕組みどおりに回っているかまで見届ける。
ここまでやって、はじめて採用が機能すると考えています。
「店に入れば育つ時代」の終わりと、四大スタンス

ここまで採用・育成を設計する理由は、今はもう「店に入れば勝手に育つ時代」が終わっているからです。かつてはキャッチもビラ配りもできましたが、今はそれをしてはいけない。営業の連絡ひとつをとっても、際どい時代になりました。
だからこそ、SNSによる自社とグループのブランディングが効いてきます。積み上げられている店には、歌舞伎町という街の力もあって、初回のお客様が毎年しっかり入ります。集客そのものには困りません。しかし、その中で「選ばれる」のは非常に難しい。どうやってお客様の記憶に印象を残すか、最後まで設計して育てる必要があります。
その先に、幹部研修制度を置いています。幹部の評価設計については、ある大手企業の制度を参考に入手し、僕たちの業界向けにつくり替えました。
そこで定めたのが「四大スタンス」です。
自己変革力、素直さ、当事者意識、やり抜く力。この四つを捉えられている人を、半年に一度の人事評価で幹部へ引き上げていきます。
一般的なホスト業界は評価設計が甘く、結局は売上だけで測られがちです。しかし僕は、売上だけを伸ばしているホストに憧れません。売上だけの経営者にも、同じことを感じます。むしろ、言葉に力が乗っている人、自分なりに面白いことを発信し、挑戦している人が、この四つに自然と当てはまります。
社員もホストも同じ基準で見ているので、「人として尊敬できる人が上司にいる」状態を、これからもつくっていきたいと考えています。