ライフステージの違いが軋轢になる職場、ならない職場――「また私がやるんだ」を生まない3つの手当て
こんにちは。
『組織の左腕』コーチの小澤 槙人です。
今回は「ライフステージの違いが軋轢になる職場と、ならない職場の差」について書いてみます。
「また私がやるんだ」が生まれる構造

前回は、女性が多い職場で会話が噛み合わなくなる理由についてお伝えしました。
今回は、もう少し構造的な話です。女性の多い職場では、ライフステージの違いによって、これまでなかった軋轢が生まれることがあります。
お子さんがいる方は、子どもが体調を崩せば早退しなければなりません。その日の業務は、誰かが引き取ることになります。
引き取る側に何度も同じことが続くと、「また私がやるんだ」という気持ちが生まれます。お子さんがいない方や独身の方が「なぜ私ばかり」と感じるようになる。そういうケースは実際にあります。
私の現場でも、産休に入られた方がいましたし、不妊治療で体調を崩しがちな方もいました。
ここで大事なのは、どちらか一方だけにアプローチしても解決しないということです。休む側にも、支える側にも、それぞれ手を打つ必要があります。
理解はチームに求め、ワードは外に出さない

私がやっていたのは、チームに対してきちんと理解を求めることでした。
ただし、その前に必ず当事者に確認します。この事情をチームに伝えてよいか、という確認です。本人が了解したうえで、はじめてチームに話します。
そのかわり、この話はチームの外には出さないようにしよう、と決めておきます。
「最近なぜ休みがちなのですか」と、別の部署から聞かれることは実際にあります。もちろん上層部には通しますが、それ以外の場所には広げません。
そのうえで、「今はこういう理由でリモートにしている。だからみんなでフォローしていこう」という話を、チーム全員にきちんとします。
センシティブな情報はセンシティブなまま扱う。しかし、支え合うための連携だけは、あらかじめ作っておく。この線引きが要になります。
私の場合は、妻が産休に入ったときに大変さを間近で見ていました。ですから「こういうところが大変になると思います」と、具体的に伝えることができました。
独身の方や、お子さんがいない方には、どうしても想像しにくい部分があります。そこを言葉で補っておくと、チームの受け止め方が変わります。
そしてもう一つ、見落とされがちなことがあります。その様子を、周囲の男性社員も見ているということです。
自分が育児で休むとき、あるいは自分の妻が同じ立場になったときに、こういう扱いを受けるのは嫌だ。そう感じさせてしまえば、上司や会社に対するリスペクトは失われていきます。
「休んですみません」と謝らせない
とくに気をつけたほうがよいと思っているのが、謝罪です。
「お休みをいただいて、ごめんなさい」「みんなが大変な時期に産休に入ってしまってすみません」
そう言ってくるケースが、本当に多いのです。
それが当たり前の光景になると、周囲も次第に「謝るべきことなのだ」と受け取るようになります。
ですから私は、「そんなことはありません」「謝る必要はありません」と伝えていました。そういう連絡は、チャットでも送らなくていいと伝えます。
後ろめたさが残ったままでは、子どものために休むこと自体がしづらくなります。それはご本人にとっても、会社にとっても良いことではありません。
送り出し方も同じです。ひっそりと、肩身を狭くして産休に入るのではなく、きちんと送り出す。それだけでも、職場の空気は変わります。
生活の変化による離職は、当然あります。しかし、こうした文化があるかどうかで、望まない離職は減らせるはずです。
制度だけあって形骸化している会社

ここで、制度の話をしておきます。
単純に制度だけがあって形骸化している状態では、あまり意味がありません。
トップや経営層から「私たちはこう考えている」「ここまでは共有できる」ということを、ある程度はっきり示す必要があります。
なぜその制度があるのか。その理由を経営層から現場に落とし、全社員の理解を得ていく。文化づくりとは、そこまで含めた話です。
制度を作った時点で終わりにしてしまうと、現場のマネージャーは何を基準に判断すればよいのかわからなくなります。
30代のママさんは、中小企業の隠れた優秀層
受け皿の話もしておきます。
ブライダル業界にいた頃は、部署の異動という受け皿がありました。コールセンターの部署です。
後には、完全にリモートでオンラインだけで接客できる部署もできました。プランナーとしての経験を活かし、低単価の商材をオンラインで完結して販売するチームです。
これは後々できていったもので、最初のうちは土日に出られないと難しく、そのルートを作るのは簡単ではありませんでした。それでも、受け皿があるかどうかで、続けられる人の数は変わります。
直近でも、こうした相談を受けます。
30代のママさんから、もっと働きたい、もっとコミットしたいという相談です。しかし夕方には退勤しなければならず、今はこういう働き方しかできない。ほかに方法はないでしょうか、と。
その方は、もともと20代でめちゃくちゃ成果を出していた方です。
限られた時間の中で効率よくパフォーマンスを出す。そういうママさんは多いのです。それなら、もっと働いてもらったほうが会社にとって絶対に良いはずです。
報酬もきちんと得られて、しっかりコミットもできる。そうなれば、みんなハッピーなはずです。
そして今、そういう方々のほうが、働ける場所を探しています。ちゃんと働いて成果を出せば評価される会社を求めているのです。
人が足りない企業が多い中で、この層に目を向けることは、中小企業にとってむしろ成長の機会になります。
セールス系の職種であれば、これはわかりやすい形で示せます。「あの方は時短勤務ですが、売上を倍出しています」と、数字で見えるからです。
そうしたロールモデルが社内に一人いるだけで、入社後のキャリアが見えるようになります。ライフステージが変わっても活躍している社員がいる、という事実そのものが効きます。
もちろん、全員がそれを享受できるかというと、能力的な部分もありますから、簡単ではありません。それでも、その道があるほうが、コミットしてもらえるのではないかと思います。